【藤井聡】「ウクライナ」からの教訓~来たるべき“有事”にどう備えるか?~ - 「新」経世済民新聞 【藤井聡】「ウクライナ」からの教訓~来たるべき“有事”にどう備えるか?~ 「新」経世済民新聞 (出典:「新」経世済民新聞) |
この度、表現者クライテリオンから、
「ウクライナ」からの教訓~来たるべき“有事”にどう備えるか?~
の特集号を出版いたしました。
この特集は、言うまでも無く、ウクライナへのロシアの侵攻についての特集。
ですが、このクライテリオンの特集は、一般的なテレビや新聞、雑誌の論調とは全く異なる角度からの記事をとりまとめたものです。
そもそも、ウクライナとロシアは今、国家の命運をかけて真剣に戦っているのです。その真剣な戦いが、幼児向けの戦隊ものや漫画の「勧善懲悪」の図式だけで語れる筈もありません。
しかしそれにもかかわらず、本年2月のロシアのウクライナ侵攻以後、国内のメディアは、そんな幼稚な「勧善懲悪」の図式の報道一色に染め上げられています。
このままでは、我が国日本の外交が適切なものから大きく歪められ、将来に対して巨大な禍根を残すことともなりかねません。
それではまるで、重要なビジネス上の交渉を、物事を単純にしか理解出来ない小学生に任せるような事になるからです。
本誌クライテリオンではこうした危機意識の下、「ウクライナ」の問題を多面的に考えるための様々な記事に基づいて特集を企画した次第です。
もちろん、米国を中心としたNATO諸国が言う様に、今回のウクライナ侵攻の様な「力による状況変更」は国際法違反であり、
かつ、ブチャであったと言われているロシア軍による残虐行為は、それがもし真実であるとするなら徹底批難すべき事柄であることは間違いありません。
そして、隣国の軍事大国からの具体的な侵略のリスクを抱えた我が国日本としては、同じような境遇の中で、ロシアから自らの主権を守るために必死になって戦う姿には、エールを送る他ないこともまた事実です。
しかし、伊藤貫氏の本特集記事『三十年間、ロシアを弄んできたアメリカ』の中で詳しく語られている様に、アメリカは執拗にロシアを摘示し、
その国力を脆弱化せんための様々な破壊的工作を行い、安全保障問題についても「約束破り」を繰り返してきた事もまた否定しようの無い事実です。
その事は、外務省の重鎮、東郷和彦氏が『「ウクライナ」は極東に何をもたらすのか?』の中で詳しく語っていることでもあります。
したがって、アメリカはこの戦争を、ロシアを追い詰めるための重要な好機として捉えている疑義が濃密にあるのです。
というよりむしろ、伊藤貫氏が主張する様に、アメリカは、ちょうど日本が戦争を始めるまでABCD包囲網をはじめとした様々な外交政策で日本を追い詰め続けた様に、
ロシアが「暴発」するまで、NATO東進を軸として徹底的に「刺激」「挑発」し続けたと言う側面が濃密に考えられるわけです。
ではなぜ、そこまでロシアはウクライナに拘るのかと言えば、座談会『戦争と人文学』で金子宗徳教授らが口を揃えて指摘している様に、
ロシアのナショナルアイデンティティの確立と維持・確保において、ウクライナは無くてはならない存在だからです。
ロシアにとってウクライナは、地政学的に重要な国であるのみならず、ロシアを中心としたスラブ民族の「自決」において必要不可欠なのだと認識しているわけです。
そしてこの発想に基づく国際的、国家的運動は、「英米を中心としたアングロサクソン支配体制」に対抗する、非アングロサクソン国家において普遍的に見られる反発運動なのです。
それは、今日の中国にしても、アラブ諸国にしても、そして、かつての「大日本帝国」にしても、そうした運動が繰り返されてきているのであり、
そうした連綿と続く、英米・アングロサクソン支配に対する挑戦運動の一つに、今回のロシアのウクライナ侵攻が位置づけられているという次第です。
……
しかし、こうした議論をTV等で展開すると「お前はロシアの回しものか!」「侵略を是認するのか!」といった激しいバッシングが起こるのが、今日の日本の世論環境です。
しかし、辻田真佐憲氏が「ウクライナ政府にプロパガンダはないのか?~情報戦のリアリズムを見よ~」で詳しく論じている様に、
ロシアは何の申し開きも出来ない完全に悪い国である、と見なす勧善懲悪図式は、自らの防衛をかけて必死で戦うウクライナ政府の「プロパガンダ」であると考えるのが冷静な態度というものです。
(全文はソースにて)
https://38news.jp/economy/22118
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